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2016年5月

2016年5月19日 (木)

違法性と信用の話

 先日パナマ文書が公開され、日本の大手企業や有名実業家がタックスヘイブンを利用して節税していることが明らかとなりました。釈明に追われた当事者は、こぞって「違法性はない」と開き直っています。また、東京都知事の舛添要一さんが税金でファーストクラスに乗ったりスウィートルームを利用したり公用車を使って別荘通いしていた点について「違法性はない」と開き直っています(現在は違法性の「ある」別の疑惑も出ています)。日本は法治国家なので、法律に禁止されていないことであれば何をやっても罰せられないのが基本です。なので、確かに違法でない以上、罰することや追徴課税を課すことはできません。しかし、これに納得できる国民はいないでしょう。皆きっちり納税している中、実質的に脱税をしている連中が見逃されていれば国民の間に不公平感が増し、ますます勤労意欲ひいては納税意欲を失くしていくことになるでしょう。倫理的にどうなの?と問われているにもかかわらず「違法性はない」としか答えられない企業や人物は信用を失い、その内消えていくでしょう。既に不買運動も始まっているようです。

 教育業界も例外ではありません。模試を受けただけの生徒を合格者に含めていたことが判明し、公正取引委員会により勧告処分を受けた某大手予備校、本を注文しただけの人や送迎バスに乗っただけの人、模範解答を請求しただけの人も合格者にカウントしていたことが判明し、同様の処分を受けた司法試験予備校、途中でやめた人や体験授業を受けただけの人、夏期講習を受けただけの人も合格者にカウントしている塾、15分~30分ほど「個人契約はだめですよー」「挨拶はきっちりしましょうねー」などの説明をしただけで「わが社が責任をもって研修を行い、教えるプロに成長させました」と言う家庭教師派遣会社(どのコースに頼んでも派遣される教師は同じです)、「生徒」や「研修」の定義次第でどうとでも解釈できるため、こぞって「違法性はない」と開き直ります。そういう倫理観なき会社は信用を失い、淘汰されていくことでしょう。

 とある有名私立の話です。以前、一部の私立が合格実績を上げるために有名私大の推薦枠を成績下位の生徒に配分していると書きました(寄付金と推薦枠配分の因果関係については不明です)。しかし「人の口に戸は立てられぬ」もので、この不公平な配分が生徒や保護者の不信感を招き、結果、生徒達の勉強意欲を阻害し、合格実績の低下や志望者数の減少を招いているようです。合格実績を上げるには、下位の生徒に推薦枠を与える方が確かにコスパはいいでしょうが、人の感情を全く無視したこういうやり方に不信感を持たれるのは容易に想像できるはずなのですが。

 かつて儒家は法家を「ルールをつくれば、人々は『ルールさえ守っていれば何をやってもいい』と思うようになり、倫理に外れた行為を行っても恥じることがなくなる」と批判しましたが、今まさにそうなっている通りです。もっとも、法家は儒家を「モラルに任せたら結局ずるがしこい奴だけが得をし、正直者は損をする。だから法(ルール)で不公平がないようにしなければならない」と反論しています。これもまた妥当です。結局、コンプライアンスも倫理観もどちらも必要だということです。

2016年5月 8日 (日)

『これからの世界をつくる仲間たちへ』落合陽一

 最近テレビによく出演されている落合陽一さんの本です。内容は、これから世の中が大きく変わる中で、若者がどう生きていくべきかを説いたものです。理系の方ですが専門的な内容ではなく、分かりやすい文体で書かれています。

 内容を簡単に要約すれば、今までは事務処理能力の高いホワイトカラー(知的労働者)が出世のロールモデルだった、なので学力が高い=事務処理能力が高い人は成功できた、しかしこれからはコンピューターが加速度的に発展してホワイトカラー(知的労働者)のポジションを奪っていく、なので勉強ができるだけでは成功できない、成功したいならコンピューターにできないことをするしかない、コンピューターは事務処理能力は高いが創造性はない、なのでこれからは創造性のある人(「クリエイティブ・クラス」)を目指すべき、というものです。後半は、クリエイティブクラスになるために必要なことが具体的に書かれており、若者は勿論、私のような中高年にも非常に参考になる内容だと思います。

 ただ、実際のところ、現在の日本の教育システムでは、なかなか創造性を育てることは難しいだろうと思います。創造性とは答えのないものですが、最初から答えのある問題をテストや入試で出題して、それが解けると評価される、そういう環境では優秀なサラリーマンは育ちますが創造性は育ちません。これからは入試の形式もどんどん変わってくるでしょう、どの学部でも小論文は必須になってくると思います。

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